【官能小説】第五話「ディープキスで、気持ちを確かめ合って……」
彼も、私の外で果てた後。
まるで、今までの情事が嘘だったかのように、二人静かに寄り添いあった。
不意に、彼がぎゅっと、手を握ってくる。
私は思わず、振り返った。
「ど……したの?」
「んー、夏は短いな、って、思ってさ」
彼の視線は、私ではなくて、洞窟の出口の向こう側に見える白浜の方を見ていた。
海から入り込んでくる水が、足元で波音を立てて揺れている。
ああ、そうか。
私にも、彼の言いたいことがわかった。でもそれって、ちょっとズルい。
だって、こんなタイミングで、そんな寂しいこと言うコト、無いじゃない。
私は札幌。彼は東京。
夏が終われば、戻らなくてはならない。
官能小説「リゾートバイト、真夏の海」第五話
「あのさ、なんか、勢いありすぎた気がするけどさ、俺、」
「うん」
「お前のこと、本気だから」
「……うん」
「ヤりたくて口説いたわけじゃなくて、その、好きだからヤりたかったって言うか」
「もしかして、疑われてるって思ってる?」
「いや、そういうワケじゃない……けど」
さっきまでの威勢はどこへやら、妙に弱気なところが、少し、可愛い。
私は身を乗り出して、彼の頬に短くキスをした。
優しい光の瞳が、私の方を振り向く。
「失礼ね、私のこと、ただの田舎者だから簡単に口説けたと思ったら、大間違いなんだから。スキじゃなきゃ、しない。気持ちが無ければ、こんなこと、しない」
「……そっか」
くしゃくしゃと頭を撫でられる。
そう、私はこの、彼の笑顔が大好き。言葉の、行動の端々に滲み出る、陽だまりのような温かさが、スキ。
まあ、初デートは、いきなりこんなんで、ちょっと戸惑ったのは事実だけど。
「好きだ」
「んむっ……」
唇を、深く、深く塞がれて、目を閉じる。
今度は、舌だけではなくて、上下の歯茎の辺りも、ねっとりと舐めまわされる。
苦しくて逃げようとすると、舌を甘噛みされて、引き寄せられた。
ちゅくっ、ちゅぷっ……と漏れる音が、波の音に溶けて、私の耳に直接聞こえてくる。
彼が時折、二人の混ざった唾液をごくっと飲み込む音が聞こえてきて、その度に自分の鼓動が早くなるのがわかった。
「今から約束する。絶対、会いに行く」
「私も……、」
「だからまずは、いっぱい、想い出を作らなきゃ。まだもう少し、一緒にいられるんだしな」
「うん」
微笑み合って、再び深くキスを交わす。
何度も角度を変えながら、お互いの舌をお互いの舌で包み合うように絡め合いながら、私達は、まるで残り短い夏を惜しむかのように、お互いを求め続けた。
二人の夏の、ヒミツの想い出。