【官能小説】第五話「円を描くように腰をグラインドさせて、汗を飛び散らせながら絶頂……」
一番奥の部分で、何度か大きく円を描くように腰を動かした後、入り口ギリギリの部分まで抜き取られる。
そして、
「あんっ! あっあっあっあっあっ……っ、っ、っ、あっ!」
彼の小刻みな抜き差しに合わせて、私の声も上下する。
時折彼の少し苦しそうな声が聞こえてきて、彼もどんどん息が上がっていっているのが伝わってくる。
両手でしっかりとお尻を押さえつけられて、快楽を逃したくて逃げようとしても、毎回真ん中を突き上げられてしまう。
正直、バックは……普通の体位に比べると、あんまり好きじゃない。
受ける刺激が大きすぎて、どうにかなってしまいそうなのが怖いのと……それから、彼の顔が、見れないから。
でも、
「――きっ、……っ」
彼が、息も絶え絶えに、私の名前を何度も呼ぶ。
官能小説「ラブホテルが大好きな彼~鏡のお部屋で~」第五話
目の前の鏡には、ただただ私を貪ろうとする、男としての……いや、オスとしての、彼の姿が映り込んでいた。
普段はチャラいくせに、やけに、必死な風で。
愛してる。
そう、何度も言ってくれる。名前を呼んで。私を求めて。
……そんなに必死にならなくても、私、どこにも行かないのにね?
あー……やっぱり、この人、きっとバカなんだ……。
でも、
「……っし、っ! あっ! あっ! あっ!」
私も、名前を呼んだ。声には、なってなかったかも、だけど……。
でも、それで通じたのか、彼の動きが、絶頂に向かってどんどん早まっていく。
「ぃくっ! いくっ! いっ、いっ、いっ! っちゃう!」
「――っ!」
二人で一緒に、熱い吐息を吐いて。
暫しの沈黙。私の中に、ドクドクと彼の熱が脈打つ感覚。一気にしぼんだ彼が、私の中から抜けてしまう。そのまま、二人でベッドの上に、崩れ落ちる。
乱れた呼吸だけが、しん……と静まり返った部屋に響いていた。
少しずつ呼吸を取り戻してきた彼が、横に寄り添ってきて、私の髪の毛をそっと撫でてくれる。
そうして、ほら、と、天井の方を指差した。
「乱れた姿も、すっごく、可愛い」
「……バカ」
髪の毛もボサボサで、汗まみれになった自分。
さすがにもう見ていられなくて、私は彼の広い胸に顔を埋めた。
大きく深呼吸をすると、彼の香りで、胸がいっぱいになる。……すごく、落ち着く。
「ねぇ、少し落ち着いたらさ、」
「ん……?」
「お風呂入って、もう一回しようと思って」
「――え?」
は?
「あ、お風呂は、入らなくてもいいんだけど、もう一回、しようと思って」
いやいやいや、お風呂の有無が問題なんじゃなくて、
「いや、思ってる、じゃなくて、する、から♪」
「……、」
「だって今日の君、鏡見て感じまくってるのか、すっごく……積極的だし、そそるんだもん♪」
その顔は笑っていたけど、絶対に譲らない、という、意志の強い顔だった。
あぁ。
どうやらまだまだ、ホテルからは出れないみたい……?